「サーカスチャーリー」というファミコンゲームがある。
タイトルそのままに、サーカスに所属するピエロのチャーリーが様々な曲芸を披露するだけの実にシンプルなゲームだ。
よって、そこに敵はいっさい現れない。
ゲームオーバーに至る道は唯一、チャーリーの曲芸失敗による自滅のみとなる……。
チャーリーは何のために曲芸をするのか?
スタートボタンを押すと、突然ライオンの上に立ち乗りするチャーリーが登場。
そして何の説明もないまま、待ったなしの火の輪くぐり。
これが取説なしの裸ソフトの宿命だ。
しかし現在にはネットがある!
調べによると、どうやらチャーリーは気取ったライバルに勝って「サーカスの団長の娘・ジェニーと結婚したい」という思いからショーに出演しているらしい。
邪念のカタマリじゃねーか
自分の望みを果たすために日々鍛錬を積むとは、なかなか立派な男じゃないか。チャーリー!
イソップ童話「ウサギとカメ」を読み解く
さて、イソップ童話に「ウサギとカメ」という話がある。
イソップ童話は “教訓” 色が強い童話で、「北風と太陽」「オオカミ少年」「アリとキリギリス」など、誰もが知っている有名な物語が収録されている。
「ウサギとカメ」はどんな話?
さて「ウサギとカメ」を簡単に説明すると……
1枠1番ウサギ、好スタート!あっという間に後続を引き離し単独首位に立ちました。一方カメは大きく出遅れたか。さて、ここからどんな展開を見せるのか。ウサギ、逃げる逃げる。完全に逃げ切れると踏んだのか、突然の休息。一方カメはまだ後方。一歩一歩着実に進むが厳しいか。
……中略……
なんとカメ、後続から恐ろしい鈍足で追い上げてきた。ああっ差した、ここで差しました!そしてまさか……なんと一番人気のウサギを引き離して今ゴオオオオルイン!
勝ったのはカメ、カメです! まさかの万馬券……いや、万亀券でました! 万年だけに!買ったのはカメです……! つづけて配当です……
ようするに、オッズ1.1倍 一番人気のウサギに勝ったカメの物語である。
「ウサギとカメ」に学ぶ教訓
ウサギとカメには、2つの教訓があるとされている。
1つは「少しの油断で、簡単に手に入るものを逃してしまう」こと。
もう1つは「諦めずに一歩一歩積み重ねれば、大きな目標を達することができる」こと。
前者は「油断大敵」、後者は「継続は力なり」を表すのに分かりやすい逸話だ。
カメはのろのろもたもたしているけれど、それでも諦めることなく着実に前に進んだことでゴールという栄光を手に入れたわけである。
そして実は、サーカスチャーリーもまさにそういうゲームなのだ。
アクションゲームは華麗に魅せる!?
ところで、アクションと聞いて何を思いうかべるだろうか?
代表的なところでは、万人が知る「スーパーマリオブラザーズ」があげられるだろう。
そしてアクションゲームとは、じつはプロレスと同じように「観客に魅せる」ためのショーでもある。
たとえば、もしYouTubeのゲーム実況を見るとして、のろのろもたもたジャンプ位置を合わせて1枚ずつコインブロックを叩くマリオを見るより、スピーディーに鮮やかに軽やかに各ステージをクリアしていくマリオを見るほうがワクワクするでしょう。
よって「アクション=のろのろゆっくりプレイするのはカッコ悪い」という暗黙の掟がある以上、そのようなプレーをするのは恥ずかしいことなのだ。
しかし、あえてそこにメスを入れたゲーム、それがサーカスチャーリー。
このゲームはカメのように一歩一歩着実に進むことこそ、ゲームクリアにつながる道となるのである。
サーカスチャーリーをプレイする
サーカスチャーリーをプレイするにあたっての極意は、終始一貫して「タイミングを合わせる」こと。
このゲームは右スクロールアクションなので、初代マリオのごとく「右に進むだけのゲーム」として捉えられがちだが、実はちがう。
サーカスチャーリーは「後ろに下がることができる」のだ!
右スクロールだからといって馬鹿一直線に右へ突っ走っていっても、タイミングによっては一発退場である。
では早速、各ステージを見てみよう!
1面:火の輪くぐり
1面はライオンに乗って火の輪くぐり。
いきなり派手なショーなので、プレイヤーの気分も盛り上がる。
これは下の炎と、上に流れてくる火の輪を同時に飛び越えるタイミングを合わせる必要があり、失敗するとこうなる▼
だからこその後退!
これは攻めの後退だ!
実は「後ろジャンプ」もできるサーカスチャーリー。
2面:サルつなわたり
2面も同じように綱渡りをしながら、サルの頭上を飛び越えていくだけ。
途中で青いサルが来るので、そのときだけは大きくジャンプ。
基本的にゆっくり進めば、まったく難しくない。
3面:玉乗り
初心者殺しの3面。
ここで「一歩ずつ進めば絶対にクリアできる」ゲームの本領発揮!
さあカッコつけてないで、ゆっくり進むんだ!!
転がってくる大玉はスピードも遅いので、適度な距離をあけて次の大玉に飛び移るだけ。あれほど難易度が高く思えた玉乗りが一気にイージーモードになるよ!
焦らなくても時間は充分。
「見ててもつまんないプレイ」でいいじゃない!
4面:トランポリン曲馬
4面のポニーは後ろに下がることこそできないが、ブレーキをかけて調整することができる。疾走によるトランポリン事故を自ら起こさず、ゆっくり確実に進めば必ずゴールにたどりつける。
しかしこの疾走感がたまらないんだなあ。
※実際にプレイするとあまりの速さに翻弄されます。見てるとそれほどじゃないですが。
とはいえ疾走事故頻発を避けるために、少しゆっくりにしても……
この有様。
なんだよこれ!
危険すぎるだろトランポリン曲馬!
もう死亡遊戯だよ!!
だから結局、ゆっくり進むのがいいのだ。
ゆっくり進めばクリアできるのだ。
ブルース・リーが見向きもしない速度でいいのだ。
4面攻略のコツ
ブレーキが使えると上記に書きましたが、実際にはその必要はありません。
そこは「操作はジャンプだけ」というシンプルイズベストの極みサーカスチャーリー。
馬の速度はそのままに、ただジャンプだけ操作すればクリアできます。
大切なのは、二つ並んでいるトランポリンのうち、どちらに着地するかを即座に判断すること。
自分の現在地からジャンプし「手前を狙ったら真ん中のスキマに落ちるかも」と思ったら後ろのトランポリンへジャンプするべし!
ふざけてやってると思うだろ。マジで隙間に落ちるんだぜ。
その見極めさえできれば、
サーカスチャーリー最長の180Mをノンストップで駆け抜けることができます!
残り20Mを切った時点で落馬とか死ねるからMAJIDE。
サーカスチャーリーから学ぶこと
人間という生き物は、華やかさを好むものだ。
どんな勝負事であっても、地味に着実にかつ戦い方より、やはり華やかに圧倒的に勝つ戦い方が好まれる。
しかし、地味であることは本当にカッコ悪いのだろうか?
そう……サーカスチャーリーは教えてくれるのだ。
のろまと罵られても、つまんねえと回れ右されても、一つ一つ着実にこなせば必ずたどり着ける場所が……
あれえええええええ!?
ぜんぜんできねーじゃん!
着実とか関係なくて極悪難易度じゃん!
なんだよこれえええええ!!
地道にやることで乗り越えられる壁はあるが、立ちはだかる壁が大きすぎた時には撤退も必要である。
エンディング
果てへの到達
どんなに無理だと言われてもチャーリーは鍛練をつづけた。
そしてついに、彼はやり遂げたのだ!
まあチャーリーというか、鍛練度が上がったのは間違いなく私のほうである。
果ての果て
長く苦しかった5面をクリアした。
これでようやくジェニーと結婚……
ステージ6!?
チャーリーよ、どうしてしまったんだ。
観衆から浴びる称賛の声と拍手に酔ってしまったのか?
それとも極限状態に焦がれる系に走ってしまったのか?
もはやチャーリーの目に、ジェニーが映ることはなかった。
彼はこの先、時間が続くかぎりショーを続けることになるのだ。
あのカメの如き地味なショーを。
いつまでも…いつまでも……。
~無限END~
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